ラララ吉祥寺
「だって、もう朝ですし。朝食の仕度をしないと……」
「俺も手伝うから、そう慌てることないだろ」
そう言いながら、彼はぐっとわたしを自分に引き寄せると、肩に顔を埋めて囁いた。
「おはよう、良く眠れた?」
「はい、もうぐっすり」
その甘い響きに戸惑いながら、なんとか強気で返事を返した。
「ドキドキしたりはしないわけ?」
「ドキドキというより……、安心できるみたいです」
その証拠に夢も見なかったし。
「それは喜んでいいのかな」
じゃこれならどお? といきなり、木島さんが身体を起こしてわたしの反対側に体勢を入れ替えた。
目の前には木島さんの笑顔。
「えっ、それ反則ですよっ!」
必死に両腕を伸ばして抵抗するも空しく、木島さんはわたしの唇に触れるだけの優しいキスをした。
「さ、もう起きないと、やばいやばい。また田中くんに先をこされちまう」
何故か急に慌て出した木島さん。
彼はそのまま起き上がると大きく伸びをした。
「今日も良い天気みたいですよ。芽衣さんの退院の日も晴れると良いですね」
じゃ、僕はお先に、と木島さんは部屋を出ていった。
それはもう、あっさりと。
わたしはのそのそ布団から這い出ると、昨夜脱ぎ散らかしたジーパンとセーターを拾い集めて身につけた。