ラララ吉祥寺
「ただいま」
わたしがガラスープを煮立てた鍋に大根の千切りを放り込んだところで、木島さんが帰ってきた。
「おかえりなさい」
わたしは急ぎ、豚小間をスープにほぐし入れ灰汁をすくう。
最後に小ネギを散らせば、大根と春雨と豚肉の中華スープの出来上がりだ。
「スープがあるとは嬉しいな」
さすが文子さん、と木島さんは鍋を覗き込んで満足気に微笑んだ。
木島さんが買ってきてくれたのは、あっさり肉まんとジューシーな五目肉まん。
一個が直径二十センチはある、大きなパオだ。
「う~、二個は無理かもですよ」
「それは食べてから言ってください」
木島さんの言葉通り、食べ出したら美味しくて、止めることなどできなかった。
「これって、明らかに食べ過ぎです。
スープなんていらなかったですね」
わたしがお腹をさする横で、木島さんは、そうですか、なんて涼しい顔でスープを飲み干すところだった。
「大丈夫、文子さんはもっとしっかり太って、素敵なおばさんになって欲しいし」
なんて意味不明なことを真面目な顔して言う木島さん。
「母も痩せてたし、わたしって太りにくい体質なんです。
ご期待には添えそうにありません」
それは残念、なんて、真面目に返す木島さんがなんだかとても可笑しくて笑ってしまった。
「やっと笑いましたね」
なんて、嬉しそうに笑う木島さんに、またしてもわたしはしてやられた気分だ。