ラララ吉祥寺

「だから言ったでしょ。

彼は今、混乱してるだけです。

信じてやって下さい」

「もう……、なんで木島さんはあんな男の肩をもつんですかっ」

「仕方ないでしょ、僕は男だし。彼の複雑な気持ちもよくわかるんで」

「複雑イコール、中途半端ってことでしょ。

わたし……、どっちつかずで、だけど好き、みたいないい加減な男、許せません。

芽衣さんは未来をかけて身体を許して、命を賭けて子供を産んだっていうのに、あんな……」

「所詮男は女に叶わないってことですよ」

精神的には特にね、と木島さんは付け足した。

「いきなりその敗北宣言は、うそ臭いですよ」

「そうですか?

全く持って完敗ですよ。

おまけに僕は女性を崇拝してます」

「崇められても困ります」

「でも僕は好きだな、文子さんのそういうところ」

「えっ?」

「なんにでも真っ直ぐで潔い。

貴方となら、百歳までも仲睦まじく穏やかに暮らせそうだ」

どこまでが本気なんだか、冗談なのか。

木島さんという人は、本当につかみどころが無い。

まぁ、これが田中くん言うところの、木島さんらしさなのかもしれないけれど。

「さ、急がないと面会時間になりますよ」

木島さんに促されて、わたしは身支度を整えるべく自室に戻った。
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