ラララ吉祥寺
わたしは芽衣さんのとった態度が気にかかっていた。
モヤモヤ、モヤモヤ……。
人間、自分の感情を閉じ込めると、形式的な儀礼に走るものなのだ。
「なんか嫌な予感がします」
ん? と木島さんがわたしの言葉に反応した。
「芽衣さんは、お兄さんに本当のことを言う気は無いのかもしれません」
「かもしれませんね」
「かもしれないって、なんでそんなに冷静なんですかっ?!」
「それでも彼女は、文子さんには本当の気持ちを伝えたんでしょ。
今はまだ花岡には直接言えなくても、事実に変わりはないし、彼女の気持ちに偽りはない。
女性は感性が強いから、男みたいに最後まで型を通すのは難しいんじゃないかな。
結局はなるようになるものですよ」
「そうでしょうか……」
「それより文子さんは、自分の心配をした方がいいんじゃないですか?」
僕今夜は攻めますよ、と木島さんがニヤリと笑った。
「夕方、来客の予定があるので僕は店に戻りますが、今夜はなるべく早く帰ります」
じゃ、また後で、と吉祥寺駅で降りるわたしに木島さんは小さく手を振った。