ラララ吉祥寺
南瓜の煮物に、焼き茄子、胡瓜と若布の酢の物。
駅中の魚力で買ったお刺身の盛合わせ、白いご飯、豆腐の味噌汁。
和食で揃えた献立に、木島さんを想った。
今更結婚願望なんてあるわけ無いけれど。
芽衣さんを見ていたら、子供は欲しいななんて思う自分がいて。
三十五過ぎて初産じゃ、高齢出産の域に入るのかなとか。
子供が二十歳になったら、わたしは五十六だとか。
そもそも、こんな不安定な状況で子供を育てることなんて可能なのだろうかとか。
木島さんが子供を欲しがらなかったら、わたしも芽衣さんのように何処かでひっそり子供を産む羽目になるのだろうか、なんて。
交わってもいないうちから、そんな心配ばかりが先に立って。
でも、一番捨て難いのは。
木島さんと手を繋いで歩く温かさとか。
笑ってわたしを見つめる眼差しの柔らかさとか。
文子さん、と呼ぶ声の響きとか。
思い出すのはどれも、わたしを包み込むような優しさで。
やっぱりわたしは木島さんが好きなんだなぁ、と笑ってしまう。
木島さんはこんなわたしでも愛してくれるかなぁ……
選ぶ以前に、選ばれるかどうかもわからない。
そんなことを考えてたら、電気も付けずに食堂で、机に突っ伏して眠ってしまった。