ラララ吉祥寺
「ご馳走様でした。美味かった」
お皿も洗ってくれるという木島さんを制して、洗い物に立った。
待ってたつもりが寝てしまい、気恥ずかしさも手伝って、わたしの動きは忙しない。
カチャカチャ、カチャカチャ。
背中に視線を感じて振り向いた。
「何見てるんですかっ!
向こうに行っててくださいよ」
「いや、女性が台所に立つ姿って絵になるなって。
何だか妙に感動してしまって」
「何を今更……」
「確かにね、今まで沢山見てきた筈なんです。
でも恥ずかしながら、あまり記憶に残ってなくて。
昔は、食事は作ってもらって当たり前、って感覚あったからなぁ。
夜遅く帰って、食卓にラップをかけた夕飯が乗ってるでしょ。
こんな遅くに食べれるか、って自分勝手に思ったりして。
彼女がどんな気持ちでその食事を作って、どんな気持ちで俺を待っていたのかなんて、想像すらしなかった。
子供云々以前の問題ですよ。
それは離婚のきっかけにしか過ぎなかった。
情けない話です」