ラララ吉祥寺

「そんな生易しいもんじゃないぞ、世の中は。

ついでに言うとな、女ってのはもっと厳しいぞ。

お前は一度芽衣さんを裏切った。

彼女の気持ちを踏みにじって突き放したこと、忘れたわけじゃないだろうな。

お前が今更結婚の二文字を口にしたとして、彼女はそれを素直に受け取るだろうか。

先ずは許しを請うのが先決だろう。

自分が楽になろうなんて考えは捨てるんだな。

お前には二人を幸せにする義務がある。

幸せになる権利は、芽衣さんと赤ん坊のものだ」

わかったか、と木島さんは言い捨てた。

彼の気迫に圧倒されたのか、花岡さんは黙ったまま動かない。

まるで心の内を見透かされたように、恥かしさに顔を歪め俯いたままだ。

それでも容赦なく木島さんの言葉は続く。
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