ラララ吉祥寺
「ありがとうございました。失礼します」
そう頭を垂れて帰っていく花岡さんの背中を見送った。
「芽衣さんは、お兄さんを許すでしょうか?」
わたしはポツリと呟いた。
「あれ? 文子さんは許さないと思ってるんですか」
驚いたようにわたしを見る木島さん。
「だって……、今日の芽衣さんを見ていたら、ちょっとそんな気がします」
「大丈夫ですよ。昨日や今日知り合った男女の仲じゃあるまいし。
二人は十年以上、一緒に暮らしてきたんですよ。
その関係をそうあっさり切り捨てられるものじゃないでしょ。
花岡は真面目で誠実な奴です。
まぁ少し脅かし過ぎた感はありますが、これくらい必死になってトントンじゃないかな」
「だと良いんですけど」
「それより、さっきの続き。
僕達の関係はまだ始まったばかりですからね。
こっちの方が重要だ。
もう邪魔は入りませんよ。
夜はまだ長い」
木島さんはそう言うと、おもむろにわたしを抱き上げた。
「もう待ったはなしです」
わたしは小さく頷いた。