ラララ吉祥寺

帰り際、新生児室のガラスの前で一人佇む花岡さんを見つけてしまった。

彼の気持ちもわからないでもないが、芽衣さんに見つからないとも限らない。

わたしはそっと彼の後ろに近づいて声をかけた。

「花岡さん?」

明るい場所で見た彼の顔は、随分とやつれて見えた。

それでも彼は薄っすらと笑みを浮かべて嬉しそうに俊一くんを見ながら呟いた。

「目と口は芽衣に似てるでしょ。

でも、鼻は僕似だ。

なかなか目を開けてくれなくて、もう三十分もここで待ちぼうけですよ」

「芽衣さんに見つかりますよ」

「ああ、そうだな。

木島さんの信用まで失っちまう」

もう十分です、行きましょう、そう言って花岡さんは歩き出した。


「文子さん、でしたか。

あなたは芽衣と親しいようだ。

良かったら僕の話を聞いてくれませんか」


花岡さんにそう請われて、わたしは彼の申し出を断ることができなかった。
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