ラララ吉祥寺

彼は誤解しないでくださいね、と前置きした上で話を続けた。

「思えば両親が結婚を決めて、お互い顔を始めて合わせた時から、彼女に惹かれていたのかもしれません。

その時芽衣は10歳でしたが、小柄な本当に天使のように柔らかい女の子だったんです。

でも、両親が一度に亡くなって、兄妹二人になって、彼女は変わりました。

僕に負担をかけまいと自分を律して、家事の負担も分担して、勉強も頑張って。

僕から見ても、少し堅すぎるくらいの優等生になってしまって。

反面、ホッとする自分がいて。

芽衣がそんなだから、自分も自分を抑えられる、そんな風に思っていたんです」

「芽衣さんもそんなお兄さんの気持ち、わかっていたんじゃないでしょうか」

「それでもなんとか誤魔化しながら暮らしていたんです。

でも、昨年、僕に海外勤務の打診がきて。

海外勤務の条件は、語学と勤務実績もありますが、既婚者であることも条件の一つなんです。

海外では夫婦同伴のパーティーや家族ぐるみの付き合いが多いので、重要視されるんですね。

打診があってからというもの、上司から見合いの話がいくつも回ってきて。

まぁ、僕に付き合っている女性がいないと知れたからというのが大きいのですが。

その頃からです、芽衣の様子がおかしくなったのは。

おおかた僕が海外に行ったら、取り残されるとでも思ったんでしょうけれど。

芽衣こそ、もう28にもなって結婚する相手もいないのかと、一度鎌をかけてかけてみたこともあるんですよ」

二人ともいい歳だし、そろそろお互いに身を固めてもいい頃だと、そんな風に思っていました、と花岡さんは語ってくれた。
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