ラララ吉祥寺
彼の話を聞き終えて、わたしの頬には涙が伝っていた。
人はこうやって誤解を生んでいくのかもしれないと。
芽衣さんが未来を賭けて臨んだ、一世一代の色仕掛けが、花岡さんをここまで苦しめているなんて。
昔、わたしが放った一言が、子供を生みたいと言った一言が、雅人を苦しめたのと同じだと思った。
今ここで修復しなければ、すれ違った気持ちは、二度と重なることはないのだ。
人生には大事な分岐点がある。
それが今なのだ。
誤解はどうやったら解けるのか。
「芽衣さんは、ずっとお兄さんが好きだったんですよ。
お兄さんに近づきたくて背伸びして、優等生を演じていたって言ってました。
家に来てからの芽衣さんからはちょっと想像できませんけど」
「そうですね、久しぶりに見た芽衣は、まるで少女の頃の彼女に戻ったようでした」
「芽衣さんは、見栄を張るのを止めたんです。
自慢の妹としてあなたの傍にいるよりも、女として愛されることを望んだ。
自分に正直に生きることを選んだんです。
彼女はあなたに受け入れて貰って幸せだったと言っていました。
だからどんなことをしても子どもは産むと言っていました。
もし、お兄さんが芽衣さんと同じ気持ちでいたのだとしたら。
その気持ちを素直に伝えることが、彼女を取り戻す一番の近道のような気がします」
花岡さんは黙ったまま、わたしの言葉を聞いていた。