ラララ吉祥寺
「兎に角、こんなところで立ち話もなんですし、どうぞ」
暗い夜道の真ん中で立ち話でもないだろう。わたしは彼女を家へと促した。
とそこで、彼女の横の大きな荷物に目がいった。
「随分大きな荷物ですね」
すると彼女は待ってましたとばかりに喋り出した。
「はい。わたしの家財道具一式です。
実は、先週こちらの店舗に移動になって。
通勤は無理なのでこっちで部屋借りようと思って、地元で転出届けを出したんです。
でも、日曜から勤務で忙しくて。仕方なく店の同僚の家に泊めてもらっていたんですけど、流石に何日も居座ってたら機嫌悪くて。
部屋探すにも時間無いし、住所不定じゃ転入届けも出せなくて」
よくよく見ると、キャリーバックの上には寝袋らしきものも積まれていた。
「もしかして今晩……」
「そうなんです。今晩泊まるとこなくて。
なので、お話が纏まれば、今晩からでもお世話になれれば嬉しいです」
そう言って、ニコリと微笑む様はまるで天使。
「ま、兎に角どうぞ……」
わたしはある意味呆気にとられ、それでも彼女を受け入れた。