ラララ吉祥寺

「兎に角、こんなところで立ち話もなんですし、どうぞ」

暗い夜道の真ん中で立ち話でもないだろう。わたしは彼女を家へと促した。

とそこで、彼女の横の大きな荷物に目がいった。

「随分大きな荷物ですね」

すると彼女は待ってましたとばかりに喋り出した。

「はい。わたしの家財道具一式です。

実は、先週こちらの店舗に移動になって。

通勤は無理なのでこっちで部屋借りようと思って、地元で転出届けを出したんです。

でも、日曜から勤務で忙しくて。仕方なく店の同僚の家に泊めてもらっていたんですけど、流石に何日も居座ってたら機嫌悪くて。

部屋探すにも時間無いし、住所不定じゃ転入届けも出せなくて」

よくよく見ると、キャリーバックの上には寝袋らしきものも積まれていた。

「もしかして今晩……」

「そうなんです。今晩泊まるとこなくて。

なので、お話が纏まれば、今晩からでもお世話になれれば嬉しいです」

そう言って、ニコリと微笑む様はまるで天使。

「ま、兎に角どうぞ……」

わたしはある意味呆気にとられ、それでも彼女を受け入れた。
< 25 / 355 >

この作品をシェア

pagetop