ラララ吉祥寺


『父現る』


わたしはお湯を沸かす合間に木島さんに短いメールを送った。

多分彼なら、この文面を見て今ここで何が起こっているかを推し量ってくれるだろうと期待を込めて。


どうしていいかわからず、さりとて彼を追い返す訳にもいかず。

わたしは父と名乗る彼、山本太郎氏を居間へと通したのだった。


わたしの記憶には父は居ない。


その人を目の前に、わたしは何をどうしたら良いのか判らなかった。


「驚かれるのも無理はありません。

だが、僕も驚いたな、宏子さんが貴方に何も告げてなかったとは。

まぁ、彼女らしいと言えばそれまでですが」


わたしの入れた緑茶を啜りながら、太郎氏はわたしの知らない母のことを語った。
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