ラララ吉祥寺

木島さんに抱きすくめられるように横になり、わたし達は床に就いた。

「それにしても良かったですね」

耳元に感じる彼の吐息がくすぐったい。

「はい。

でも、なんだかまだ信じられませんけど」

「貴方の絵の才能も、父親譲りだったんですね」

「わたしのは才能ってほどじゃ……」

画家を目指していた高校生の頃から、わたしの絵への情熱は止まったままなのだ。

雅人との関係が終わった途端、わたしの絵は単なる暇つぶしの遊戯でしかなくなった。

愛を諦めたと同時に、夢も諦めた。

それでも絵を描いてお金を稼ぐ、今の自分が滑稽だと思うことさえある。


「見たらわかりますよ。

技巧うんぬんじゃなく、雰囲気が似ているというか……

彼の絵は優しい光で満ち溢れています。

愛されていたんだろうな。

文子さんのお母さん」


母に宛てた、絵手紙だけじゃなく、父の描いた表現としての絵を観たい、と思った。

そこに何が語られて、何を伝えてくれるのか。

何より、わたしがそこに何を感じることができるのか。


「わたしも早く父の絵が観たいです」


そう呟いたわたしを、木島さんはそっと引き寄せた。
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