ラララ吉祥寺
わたし達は車を駐車場に止めると、病棟目指して歩きだした。
花岡さんがわたし達に気付いて振り向いて。
「はな……」
と、わたしが花岡さんの名を呼ぼうと口を開いたその時だった。
「文子さん!」
わたしを呼ぶ呼び声と共に、病棟正面口から芽衣さんがわたしを見つけて走り出てきたのだ。
わたしも慌てて走り出した。
花岡さんの横をすり抜ける形で通り過ぎ、芽衣さんの前に立った。
「芽衣さん、どうしたんですか?
病室で待ってる筈じゃ……、って俊一くんは?」
すっかり身支度を整えていた芽衣さんだけど、あまりに身軽な姿で驚いた。
「夜から黄疸が出始めて、今日の退院は見合わせましょうってことになって」
「芽衣さんも?」
「あ、わたしは予定通り退院です。
俊一だけ伸びたんです。まぁ、軽いそうなんで、長くても一週間。
その間は母乳を搾って毎日届けないといけないんですけどね」
余計面倒な気もしますけど、と芽衣さんは小さく溜息をついた。
「芽衣!」
そう呼ばれた彼女の目が驚きに見開かれ、身体が硬直したのがわかった。