ラララ吉祥寺

その後、四人で市役所へ届けを出しに行った。

二人の婚姻届と俊一くんの出生届け。

婚姻届の証人の欄には、木島さんとわたしの名を並べて書いた。

そして花岡さんは芽衣さんを、そのまま自分の家に連れていくと言い張った。

「でも、出産前に準備した子供の荷物とか色々あるんですよ!」

と、芽衣さんが下宿に一度戻りたいと訴えたのだけれど。

「俊一の退院にはまだ日があるんだろ。

今日はどうしても俺と一緒に帰ってもらう。

これは夫としての命令だ。

まだ完全にわだかまりが消えた訳じゃないだろう?

もう少し話す時間を俺にくれないか」

彼はそう言って一歩も引かなかったのだ。

「で、お前の家って何処なんだ?」

二人のやり取りを傍から眺めていた木島さんが、唐突に横槍を入れた。

「駅前のマンションですよ」

「って何処のだ」

「吉祥寺に決まってるでしょ」

芽衣さんとわたしは顔を見合わせて笑ってしまった。


なぁんだ、そんな近くなんだ。
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