ラララ吉祥寺

「わたし、夕方には搾乳したお乳を病院に持っていかないといけないんです!」

「今日は一日休みを取ってる。

後で俺が送っていってやるって!」

それでも二人は互いに一歩も引かなくて。


二人とも頑固だなぁ~


ちょっと笑ってしまった。


「じゃ、夕飯食べに家へいらっしゃいよ」

つい口走っていた。

「それがいい」

木島さんがそう言って、わたしの肩に手をかけた。

「今夜は宴会だな。僕も手伝いますよ」

お祝いのケーキも用意しましょう、と木島さんがわたしの耳元に囁いてくれた。


夜下宿に集まるということでやっと話がまとまって、芽衣さんとわたしは木島さんと花岡さんの車に別れて乗り込んだ。

「じゃ、芽衣さん、また後で。

少しは二人の時間を楽しんでくださいね」

少し喧嘩腰の二人の様子に気を揉んで言ったつもりだったのに。

「文子さんも、木島さんと仲良く待っててくださいね」

なんて。

わたしをからかう芽衣さんの目はまだ少し赤かったけれど、無邪気な笑顔が眩しかった。
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