ラララ吉祥寺
そんな心の落胆が顔に表れていたのかなぁ~
「そんな顔されると心が揺れるな。
でも、僕も一応、一国一城の主なんで、そうそう店を人任せにもできないでしょ。
今日はなるべく早く戻ります。
芽衣さんもきっと夕方には顔を出しますよ」
ほら、茶碗落としますよ、なんて言いながらわたしの首に顔を埋める木島さん。
わたしの後ろから手を添えて、ササッと洗剤を流すと茶碗を洗いカゴに伏せて置いた。
「キスしていいですか?」
くるりと向きを変えられて木島さんに見つめられる。
「な、なんでそんなこと聞くんですかっ」
「いや、だって、こんな昼間っから不謹慎かなって」
「そう思うんなら、止めてくださいっ」
「止められそうにないから聞いてるんだけど……」
あの二人に当てられたしね、と笑いながら木島さんの唇が重なった。
食むような優しいキスが二回。
「うん。予想通り納豆の味がする」
もぉ~、何考えてるんですかぁ~、と胸を叩くわたしから逃げるように木島さんが離れていった。
「行ってきます」
「行ってらっしゃい」
木島さんの大きな背中を見送った。
幸せだな。