ラララ吉祥寺
父が記念にと、二人の姿をスケッチして、後で絵にしてプレゼントしてくれると言ってくれた。
「僕からの結婚祝いです。
新婚旅行にフランスに来るといい。
フランスは子連れでも大丈夫ですよ。寧ろ海外旅行は子連れに限る。
現地の人達と子供を介して気軽に交流できますからね。
そうだ、なんなら四人で来たらどうです?
文子にも色々見せたいものもあるし。
木島くんも、いいだろう?」
思いの外社交的な父の姿に驚いた。
母とは大違いだ。
最後にお祝いのケーキをみんなで頬張って、お腹はもうはち切れんばかり膨らんだ。
芽衣さんの口から欠伸が漏れた。
「あ、御免なさい。病院の消灯早かったんで」
「さてと、お名残り惜しいけど、僕らはここら辺で失礼しようか。
明日も朝、母乳を届けないといけないからね」
芽衣さんも眠気には勝てないのか、素直に小さく頷いた。
「僕も休むとしようか。
明日、午後一の飛行機でフランスへ戻ります」
えっ、そんな急に?と驚くわたしに父が言った。
「僕の生業は絵描きだからね。
絵を描かないと。
このいい季節を逃す手はないんでね。
フランスの初夏は美しいよ。
今回の帰国は、今日の顔合わせと宏子に会うことが目的だったから、後の手続きは代理のエージェントに任せることになっているんだ。
展覧会は十月だから、その前に君達が僕に会いに来てくれると嬉しいな」
ではまた会いましょう、父は花岡夫妻にそういい置くと、そのまま二階へ上がってしまった。