ラララ吉祥寺
三十年振りの父との再会は僅か二日で幕を閉じることとなった。
まるで夢のようで。
呆気なかった。
まぁ、今まで父の存在すら知らなかったわたしだもの、今更、寂しいとか悲しいとかそう言う類の気持ちは全く生まれてくる筈もないのだけれど。
なにかこう、物足りないうか、現実味がないというか。
ふと見ると、何時書いたのか、アルファベットを並べたメモ書きが机の上に残されていた。
オフィスとアトリエとホームページ?
「おっ、さすが売れっ子画家だな。
オフィスはパリで、アトリエはプロバンスかぁ」
メモを覗き込みながら木島さんが言った。
「彼もきっと照れているんですよ」
「彼って、父のことですよね?」
決まってるでしょ、と木島さん。
「みんなで是非行きましょう!」
屈託無く笑う木島さんに、誰も異を唱えることなんて出来なくて。
「花岡、ちゃんと休み確保しろよ」
なんて、睨みを利かせられて花岡さんは困っていた。