ラララ吉祥寺
なんだか一気に家の中がスカスカなって、隙間風が吹いてるみたいだ。
心待ちにしていたベビーの成長を、間近で見れなくなった物足りなさもあるのかもしれない。
「やっぱり、わたしも寂しいです」
「そうだなぁ」
気が抜けたように座り込むわたしを、後ろから包み込むように木島さんが抱きしめてくれた。
身体も心も少しだけ温かくなったけど、やっぱり何処か物足りない。
「真ん中の部屋空いちゃったし、また下宿人を募ってみましょうか?」
「ん? それもいいんじゃない。僕と二人切りっていうのも文子さんには気詰まりだろうし」
「そ、そんなことはないですけど……」
「ま、その方が僕も暴走できなくて有難いけどね」
「ど、どういう意味ですか?」
「文子さんも、毎日迫られちゃかなわんでしょ」
わたしの首筋に顔を埋め、「こんな風にね」と優しく唇を寄せ吸い付いた。
「ひゃっ……っ!」
思わず身を震わせて仰け反ると、ハハハ……、と笑いながら木島さんが立ち上がった。
「さて、僕もそろそろ店に出ます。
今日は午後仕入れが一件あるので帰りが少し遅くなりそうです。
すいませんが、夕食は一人で食べて貰えますか」
そう言い残し、木島さんは出かけて行った。