ラララ吉祥寺

けれど、わたしの寂しさは一瞬の内に吹き飛ばされた。

子育ての現実は思いの外厳しく、わたしは再三、芽衣さんからの<助けてコール>を受け取ることになる。

一歩も外へ出られない芽衣さんに代わり、買い物をし。

四時間置きの授乳で眠れない芽衣さんの代わりに、炊事洗濯を手伝った。

彼女が産後の体力を維持できるよう、低脂肪高淡白の食事を作り、その育児を支えた。

だって、芽衣さんにはもう頼れる親はいないのだ。

だからわたしが芽衣さんの親代わりにならなくちゃ、と必死だった。

下宿人募集の広告のこともすっかり忘れ、子育て支援に万進する日々。

あっという間に三ヶ月が過ぎ、俊一君の体重も6キロを超えた。

身体つきも大分しっかりとしてきて、少し表情も出てきて赤ん坊らしくなってきた。

お腹いっぱいで幸せそうに眠るその口元が、時折フニュっと持ち上がって笑ったように見える。

(可愛いなぁ~)

毎日のように花岡家に通うわたしを、木島さんはきっと複雑な気持ちで見守ってくれていたんだと思う。
< 283 / 355 >

この作品をシェア

pagetop