ラララ吉祥寺

それからバタバタと渡仏の準備をした。

戸籍謄本をとって、パスポートを申請して。

旅行会社との交渉は木島さんが先頭切ってやってくれたけれど。

何せ初めての海外旅行ということもあり、浮き足立ったわたしは行動が定まらない。

いったい何をどう準備したらいいのか……

「はっきり言って、パスポートとカードさえあれば、あとは何とかなるものですよ。

どうせ向こうで買い物もするだろうし、荷物は最小限に。

あ、でもキャリーバックはいりますね。さすがに僕と一緒という訳にもいかんでしょ」

芽衣さんも旅慣れしてるのかあっさりしたもので、「わたしはカリカリ梅があれば、あとは身ひとつでもオッケーです」と笑っていた。

「向こうにも紙おむつくらいあるだろうし、母乳だし。修一の着替えがひと揃えあればなんとかなるでしょ。俊夫さんもいるし」

ね、と見つめ合った二人はもうすっかり息のあった夫婦だった。

「この旅行が、いわば僕らの新婚旅行みたいなものですから。

甘い気分は全く無いですけど、夫婦揃って初の共同プロジェクトって感じでワクワクします。

僕の度量が試されるって感じですかね」

そう言って笑った花岡さんは、以前のどっちつかずの女々しい面影はなくて。

ちょっとドッキリするくらい男らしく見えたのだ。
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