ラララ吉祥寺
長いフライトにげんなりしたわたしだけれど、フランスに着いてからは夢のような時間が過ぎていった。
パリでは木島さんと絵を観て回った。
ルーブルに始まり、小さな街の美術館や画廊を巡り、父の絵を扱う画廊にも連れて行ってもらった。
もちろん、名画と言われる作品のオリジナルを目にすることはとても刺激的で感動ものなのだけれど。
わたしは小さな画廊で見た、父の絵に魅せられた。
輝く色彩、柔らかなタッチ、命を愛でる優しい眼差し。
その向こうに母の姿が見えた気がしたのだ。
「どうです、太郎さんの絵。彼の絵は、ここフランスでは評価が高い。
何を隠そう、僕もファンの一人です」
そう言って木島さんは父の絵を愛おしそうに眺めていた。