ラララ吉祥寺
パリに数日滞在した後、TGKに乗ってアヴィニオン駅へ、父の待つアルルのアトリエに向かった。
木島さんが、父のアトリエはプロヴァンス、と言ったのが印象に残っていたのだけれど。
プロヴァンスは地方の呼び名で地名ではないそうで。
フランスの北に位置するのが、首都パリだとすると。
その南、地中海に面した、東はイタリア国境に連なるアルプスを境に西はアヴィニオンを流れるローヌ川に挟まれた地域をプロヴァンス地方と呼ぶのだそうだ。
全くもって、生まれてこのかた日本を一度も出たことのないわたしには、理解するにも難易度が高すぎる。
言われるがまま、みんなの後を付いて回るのが精一杯だ。
それでも安心していられるのは、木島さんがいるからかな。
どちらかというと暗いイメージのパリから、南仏へ向かうに連れて景色が明るく変わっていく。
車窓を眺めているだけでも、気分が軽くなっていく。
ゆったりとした車内では、芽衣さんと花岡さんが代わる代わる修一くんを抱いては世話を焼いて。
通路を通る人達までもが、代わる代わるに修一くんをあやす。
赤ちゃんの可愛さに国境はないなぁ、と実感していた。
「赤ん坊連れての長旅はもっと大変かと思いましたが、杞憂でしたね」
「ほんと、修一くん、何処へ行っても人気者ですもん」
木島さんも、わたしと同じ気持ちで眺めてくれてたみたい。