ラララ吉祥寺

アヴィニオンから父のアトリエのあるアルルへは、木島さんが手配した車に乗って移動した。

木島さんが気を利かせて、ゴッホの絵に観たアルルの跳ね橋や、ローマ帝国の遺跡を巡ってくれて、ちょっとした観光気分を味わった。

丁度お昼になったので、小さな可愛いレストランで昼食をとった。

ナルホドここは海に近いというだけあって魚介のメニューが多いみたい。

魚と貝と野菜をふんだんに使ったヘルシーな料理。味もさることながら、その盛り付けの美しさに目を奪われた。

「目でも美味しいって、こういこと言うんですかね?」

「ハハハ……、文子さん、上手いこと言いますね。

僕は運転手だから飲めないけど、ワインも美味いでしょ」

「ほんとです。なんか帰りたくなくなりますね」

「太郎さんがここに居を構えた訳がわかりますね」

「……母も来てみればよかったのに」

そう口をついて出たのは、紛れも無くわたしの本心だった。

すっかり口数が少なくなった、芽衣さんと花岡さんはかなり疲れている様子だ。

修一くんも、車に揺られて眠ってしまった。
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