ラララ吉祥寺
父のアトリエはアルルの街外れにあった。
街を見下ろす小高い丘の中腹にある白い家。それは思いのほか大きくてびっくりした。
「いらっしゃい!
さぁ、どうぞ、中に入って!
お疲れでしょう!」
満面の笑みで出迎えてくれた父に、両手を広げて抱きしめられた。
アトリエを兼ねた土間は吹き抜けで広く、描きかけの絵が沢山置かれていた。
その中央には、約束の絵が。
芽衣さんと花岡さんの優しく微笑み寄り添う姿が、明るい色調で描かれていた。
(幸せそう……)
「おっ、これがベビーですか?!」
恐る恐る手を出した父は、ぎこちなく修一くんを抱き上げると目を細めて頬を寄せた。
「フ、フギャァ~」
勢い泣き出しても怯むことなく、「元気な男の子だ」そう言って父は更に目を細めた。
住まいはその奥の二階屋だった。
中庭を挟んだ住まいには大きなキッチンがあり、隣接する広い食堂兼居間には大きく開かれた掃き出し窓があった。
その先には石を敷き詰めたテラスがあって、そこからはアルルの街が一望できた。
「夕食は僕が腕を振るうからね、楽しみにしてて。
それまで少し休むといい、子連れ旅は疲れたでしょ。
二階がベッドルームだから……」
父に促されて二階に上がった。
「生憎と客間は二つしかなくてね。木島くんと文子は一緒でいいだろ?
僕も早くお爺ちゃんになりたいものだね」
父はそう言ってわたしに向かってウィンクした。