ラララ吉祥寺
「で、身分を証明する何か持ってるのか?
免許証とか保険証とか、学生証かなんか」
嫌々ながら、食堂の椅子に腰掛けた彼は、自分の身体の前に抱えたデイパックの中から、小さな手帳を出して見せた。
「学生証か。
って言っても、高校のじゃな。卒業していちゃ効力はない。
ま、卒業してるかどうかも怪しいけどな」
ちょっとだけ煽るような口調で、木島さんが影山君の顔を覗き込んだ。
「んなわけあるかよっ! 卒業してるに決まってるだろっ!」
ま、そう怒るな、と木島さんは影山くんを軽く宥める。
「だからネットカフェか。もしかして、家出したのか?」
「俺もう十八だぜ。自立して何が悪い。ちゃんと生活費は稼げてる」
「文子さん、どうしますか?
彼、未成年みたいだし、もしかしたら捜索願いが出されてるかもしれませんよ」
「でも……、このまま放り出す訳にもいきませんよね」
まぁ、そうですね……、と木島さんも渋い顔をしながら同意してくれた。