ラララ吉祥寺

お茶を飲みながら、わたし達は本題に入った。

そう、この同居の細かい取り決めについて話さなくてはならないのだ。

「じゃ、先ずはわたしから改めて自己紹介をさせて頂きますね。

わたしは山本文子、35歳、独身。

半年前に母が亡くなってこの家に一人暮らしすることになりました。

仕事はイラストレーター。在宅で請負仕事をしています。

仕事がある時は半引き篭もり。

それ以外は自由人してます」

「お一人でさみしくて下宿屋を?」

花岡芽衣は、すかさず痛いところを突いてきた。

「一人っていっても、この家には他に猫が二匹いるので寂しくはないです。

下宿屋をしようと思ったのは、単に経済的理由から」

正直寂しくはない。

「そうですか。じゃ、お家賃の取り決めは重要ですね。

では、わたしも改めて自己紹介します。

わたしは花園芽衣、27歳、同じく独身です。

仕事はアパレルのショップ店員です。

この日曜から吉祥寺パルコの若者向けブランドに移動になりました。

先週までは、丸の内でOL向けブランドのショップを任されてたんですけどね。

実家が千葉だったので東京までは割と楽に通えたんですけど。

吉祥寺は通勤片道40分余計にかかるし、思い切って独立しようと思って家を出てきました。

一応正社員でボーナスもあるし、それなりにお給料は頂いてます。

居候してた同僚のアパートは、駅からかなり遠くて、それでも月五万とか言ってたかな。

部屋借りれば光熱費もかかるし、それなりに家財道具も揃えなくちゃならないし。

それを考えたら、ここは駅からも近いし、静かで環境も良さそうだし、光熱費込みで六万位は出してもいいかなって」

花岡芽衣は淡々と、目下最重要課題のお家賃を指値で指定してきたのだ。
< 30 / 355 >

この作品をシェア

pagetop