ラララ吉祥寺

わたしの後ろからついてきた影山くんを見て、木島さんはなんだかとっても嬉しそうだった。

「ほら、青年、今焼けたとこだ、美味いぞ」

彼に皿を勧めつつ、次の生地をホットプレートに広げる木島さん。

「文子さんも、二枚目焼きますよ」

当然の如く続けられる食事の様子に景山くんは直ぐに気がついた。

「ふざけんなよ」

彼が逃げそうになるのを、すかさず木島さんが肩を掴んで引き止めた。

「まぁ、座って食ってけ。これは家主である文子さんのもてなしだ」

「ったく、大人はそうやってすぐ……」

「ちゃんと食べないと大きくなれないよ」

「そうそう、子どもは食わないとな」

「ったく、俺はもう大人だって……」

「じゃぁ、礼儀としてもてなしを受けるんだな」

「ほら、熱いうちが美味しいよ」

「ったく……」

そう言いつつも、若者のお腹は正直だ。

<キュルルル……>

彼のお腹が勢い良く鳴った。
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