ラララ吉祥寺
甘え下手
「拓馬くん、悪いわね」
「いえ、俺、暇なんで」
芽衣さんの息子、俊一君のお守りを引き受けて、一階の居間で雑誌を読みながら寛ぐ彼の姿もすっかりこの家に馴染んできた。
今はぐっすり眠っている俊一君だが、あと小一時間もすれば目覚めて泣き出すだろう。
そしたら芽衣さんの作り置いたミルクをさっと含ませて、ゲップさせて、また寝かせるのが彼の役目。
最近大きくなった俊一君は、遊び心も芽生えてきたのか、一度目覚めるとなかなか寝ないのだけれど。
彼がお守りを引き受けてくれるお陰で、芽衣さんとわたしは、しばしの休息を求めて街へ買い物に出られるのだ。
「冷蔵庫にプリンがあるから食べてね。お土産買ってくる。何かあったらメールして」
「はいはい。早く行かないと時間無くなりますよ」
わたし達を急きたてるように立ち上がった彼は、大きく伸びをした。
「俺、結構子守りって気に入ってるんで。俊一、可愛いし」
そう言って笑った彼は、もう引き篭もりのオタク青年とは思えなかった。