ラララ吉祥寺
そしてわたしも母となる
「僕の方こそ、お招き頂いて光栄でした。
僕の原点ともいえるこの街、吉祥寺で、日本初の個展が開けて、こんな嬉しいことはありません。
娘との再会も果たし、これからまた新たな気持ちで創作に取り組めそうです」
「娘さんとおっしゃいますと?
確か、山本さんは未婚でいらっしゃったと記憶しておりますが……」
「確かに、僕は正式な結婚はしておりません。
が、フランスに渡る以前に愛する人と家庭を持ったことがあります。
訳あって、ずっと離れて暮らしてはいましたが、僕にとって彼女は生涯を共にと願った、ただ一人の女性です。
僕の代表作、母と子のモデルになったのも彼女なんですよ」
「確かあの作品は、山本さんがフランスで認められるきっかけになった作品ですね」
「そうです。彼女と娘の深い絆に感銘を受けて描いた作品です。
男の僕にはとうてい入り込めない、母と子の運命的な出会いに感動しました。
現実の娘はどんどん大きくなって、大人になっていくわけですが、僕の中で、彼女の姿は永遠に母であり続ける。
何度描いても、あの感動は表現し切れない。
いやだからこそ、何度でも描きたくなるのかもしれませんね」