ラララ吉祥寺
個展の最終日、吉祥寺美術館学芸員のインタビューを受け、感慨深気に語る父の姿を遠くから眺めていた。
その後ろ手には、父の描いた「母と子」の絵が掛かる。
母と私の姿を、特別な思いで見つめていた父。
私には実感は無いけれど、確かにそこには母の面影を湛えた女がいた。
「ふーちゃん、おなかすいた?」
「ふーちゃん、おえかきじょうずね」
「ふーちゃん、おふろよ」
「ふーちゃん……」
私のことをふーちゃんと呼ぶ母は、いつだってその絵の女性のように微笑んでいた。
「ふーちゃんが決めたなら応援する。大丈夫、母さんがついてる」
そう言って私の手を握った横顔は、凛として、とても綺麗だった。
母のあの無条件の優しさや強さはいったい何処からくるのだろうと、ずっとずっと思っていた。
その答えがこの絵の中にある。
私は愛されていた。
母から。
そして父からも。
その実感がわたしの心を熱くする。
「文子さん?」
そう囁いた木島さんの声が遠くに聞こえて。
私は、お腹を抱えるように蹲った。