ラララ吉祥寺
「ナルホド。いいんじゃない、別に結婚に拘らなくても」
二人がその子の親であることに変わりはないんだし、と私達の話を聞いて、父は事も無げに頷いた。
「フランスでは、その……、事実婚っていうのかな、割と一般的だよ。
生まれてくる子に法律上の差別はないし、寧ろ未婚の片親には手厚い社会保障が付くからね。敢えて結婚に拘る理由がそもそも存在しない。
家族の形をどう作るかにも、個人の意思が尊重される」
意思を尊重するには責任も伴うわけだけどね、と父は一言付け加えた。
「僕のように、妻に責任を押し付けて自由気ままに生きてきた男が言えた義理じゃないけど、君の場合は娘に寄り添う覚悟がありそうだ。
ここで二人、新しい家族の形を追求してみるのも一計じゃないかね」
「お父さんに事実婚を勧められるとは意外でした」
木島さんの困った顔を見て、私も少し不安になる。
「私、間違ってないよね?」
縋るような気持ちで父を見ると、父は優しく頷いた。