ラララ吉祥寺
「なんだか余計に凄いことを覚悟させられた気がしますよ」
終始にこやかな父とは対照的に、木島さんは厳しい表情を崩さない。
「そうかね、木島くん」
「確かに結婚は紙切れ一枚の手続きに過ぎないわけですが……」
「不安かね?」
「型通りの夫になるより、一つの家族の担い手になる方がずっと覚悟がいるいる気がします。
僕は、以前一度結婚に失敗した男なんで、余計にそう思うのかもしれません。
安易に結婚を選択した訳では無いのですが、結果として、僕は家族としての絆を手放してしまった。
関係性を紡ぎ続けることがどんなに難しく努力のいることか、頭ではわかっている積もりですし、その努力を今度こそ怠らないぞと誓ってもいる。
でも……そうだな、二人の関係に不安を抱いているのは僕の方なのかもしれません」
情けない話ですね、と木島さんは静かに目を伏せた。
「ま、後は君達二人の問題だ。良く話し合いなさい。
僕にできることは……、そうだな、あの一角の土地をプレゼントしよう。
子供が生まれたらこの家も手狭になるでしょ。
増築するなり、建替えるなりするといい」
そう言って父は笑った。