ラララ吉祥寺


申し訳なく思った岩城さんが、近所の農家に声をかけてくれて何軒かお蔵開きに呼んで貰えることになったそうで。

「僕としては営業効果があったってことで丸なんだ。

それに岩城のお婆ちゃんも元気になったし。

昔の人は凄いな。

あんな弱弱しい婆さんが、機を織り出したとたん別人のように生き生きとして。

生活力が半端ない、脱帽だよ」

「ダツボー」

木島さんの膝の上で紡が嬉しそうに声を真似る。

お皿に鞘から取り出してもらった枝豆を並べ、小さな指で一生懸命摘みながら口へ運んでいる。

採れたての野菜は水水しく、甘く、生命力に溢れている。

「生きるって凄いことだよ」

そう言って優しく紡の頭を撫でる彼の姿に、私も小さく頷いた。

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