ラララ吉祥寺
後ろからギュッと抱きしめられる。
「木島さん、ちょっと、まだ描き終わってないんですよ」
「大丈夫、完成だ、俺が言うから間違いない」
「もう……」
仕方なく観念して筆を置く。
まぁ、もうちょっと、と思うところで止めておくのが水彩を上手く仕上げるコツでもあるのだけれど。
「ツムグが笑ってる顔みると、幸せだなって思う」
「私もですよ」
「文子とツムグがいればあとは何にもいらないな」
「食いしん坊のくせに?」
「あ、飯は別物。当たり前だろ」
「私は……」
こうして穏やかに時を過ごせる今が幸せ。
その言葉は木島さんの貪るような口づけに飲み込まれる。
「ちょ、ちょっと、ま……って……」
「駄目、次は文子似の娘が欲しい」
「そ、そんな、産み分けなんてむ……り……」
「大丈夫、念じれば通ずだ。俺に任せろ」
そういう私も、そろそろ次の子が欲しいなって思っていたりする。