ラララ吉祥寺

「ん、もう、木島さん!

子どもの前で止めてくださいっ!」

「でもね、文子。

二人目うまれたら、こっそり、なんて時間もなくなりますよ。

子育ては子育て、僕らは僕らのスキンシップは大切にしないと」

「でも……」

「こういうのは慣れれば日常ですよ」

「さ、出発進行!」

「しんこう!」

私の心配を余所に、紡の反応は至って普通。

木島さんの言う通り、何事も慣れ、なのかもしれないなぁ。

車は慎重に動き出し、紡は外の景色を見ながらはしゃいでいる。

「とうしゃん、しょーぼーしゃだ!」

「ここは消防署だからな」

「うわっ、トラック、かっこえぇ〜」

ピカピカ電飾の大型長距離トラックが反対車線を通過した。

「ツムグは車が好きだな」

「うん、すき!」

「じゃ、こんど図鑑を借りてきてやろう!

カッコ良いだけじゃなんくて、車の名前もちゃんと覚えた方が、紡がカッコ良いぞ」

「うん、ボクもカッコよくなりたい!」

もう……、木島さんてば乗せるの上手いんだから。
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