ラララ吉祥寺
孤独からの解放
「それにしても、速攻今日から入居なんて、驚きました」
そんなのあたしくらいかと思いましたよ、と言った芽衣さんは、その実、大して驚いてはいないようだ。
「実は、昨日の夜、既に下見は済ましてましてたんです」
確か、メールが来たのが八時過ぎだったと思う。
「ええぇ~、あの後見に来てたんですか?!」
あ、やだ、興奮してお汁が飛んじゃったかも。
慌てて鍋の周りのお膳を台拭きで撫でて綺麗に拭った。
「わざわざ、っていう訳じゃありませんよ。たまたま仕事帰りに傍を通っただけですけどね。
場所も佇まいも、ひと目で気に入ったって言うのが本当です」
「お店、西荻なんでしょ? まぁ、そういうことも有りじゃないですか」
「女性と同居するとは予想外の展開でしたけど……」
でも案外違和感ないです、なんて木島龍之介は取り皿にポン酢を足した。
「それにしても、この肉団子鍋、美味しいですねぇ」
「でしょ! 豚挽きにレンコンの擂ったのと微塵切りにしたのを混ぜるんです。
ビタミンB+C。お肌と美容に良いんですよ」
木島さんは男だからあんまり関係ないかもですけど、と鍋自慢をする芽衣さん。
同居初日から、何故か鍋を囲んでいるわたし達。