ラララ吉祥寺
「でも木島さん、その龍の刺繍のしてあるツナギ、目立ち過ぎじゃありませんか?」
凄い時代錯誤だし、と芽衣さんが歯に絹着せぬ暴言を吐いた。
「そんなことありませんよ。
僕の名前は龍之介、店の名前は龍古堂。
云わばこのツナギは僕の広告塔のようなものです。
店を出すちょっと前に仕入れに行った家の蔵で、行李に仕舞ってあったこのツナギを見つけた時は、ちょっとした興奮でした。
喉から手が出るほど欲しかったんですけどね、そういう素振りを見せると足元見られますから」
「高く値段をふっかけられるってことですか?」
「まぁ、そうですね。
実際、その家の蔵には大した値打ち物はなかったんです。
だから不用品を引き取るついでに行李の中身もそっくり、おまけみたいな値段で手に入れることができました」
「木島さんって商売上手なんですね」
「古物商なんて、十にひとつ、掘り出し物があれば良い方なんですよ。
だから、値付けには慎重になります。
たとえタダで仕入れても売れる保障はないですし」
この業界、厳しいんですと木島さん。