ラララ吉祥寺
わたしは遥か昔の自分の経験に照らし合わせ、彼女の今を想像した。
止まった生理。
むせ返す気分の悪さ。
下腹に感じた違和感。
それが望まれたものでないとわかった絶望。
そして胸をえぐるような虚無感。
いっそ、自分ごとこの世から消えてしまえば良いと思った日々。
『蛙の子は蛙だな』
心無い中傷がわたしを更に傷つけた。
報われない恋って、どんな恋だったのだろう?
彼女は何を諦めて、その見返りを受け取とろうとしたのかな。
母はあの時、凛としてわたしを庇い、子供を産むことを認めてくれた。
その願いは叶わなかったけれど。
父の記憶の無いわたしには、母さえいれば子は育つと、何故か揺ぎ無い自信があったのだ。
冷たく突き放されてもなお、彼の子を消し去ることなど出来なかった。
あの頃のわたしは若く、心も弱くて。
自分に降りかかった火の粉さえ振り払うこともままならなかったのに。
でも……、
今のわたしなら芽衣さんを支えてあげることができるかもしれない。
そんな勝手な思い込みが彼女を追い詰めることになるとは、その時のわたしには想像すらできなかったのだ。