ラララ吉祥寺
次の朝、朝食に降りてきた芽衣さんは、少しだるそうにはしていたが、きちんと服を着替え出勤する準備を整えていた。
「まさか、会社行くんですか?」
「だって、今日は休めないんです。
土曜で忙しいし、アルバイトが一人休みだから人手が足りないし」
「でも……」
「大丈夫です。一晩寝たら、体調も戻ったみたいだし。
昨日は疲れてるのに長湯しちゃって、だから湯当たりしたんだと思います」
ご心配おかけしました、と芽衣さんは小さく頭を下げた。
「芽衣さん、もしかして妊娠してるんじゃありませんか?」
わたしは少し声を潜めて彼女に告げた。
「やだ、文子さんたら。相手も居ないのに、どうやって妊娠するんですか?」
「月のものはちゃんと来てますか?」
「もともとわたし不規則だから……。でも、身に覚えもないのに、それは有り得ないでしょ」
と一笑されてしまった。
わたしの思い過ごしなら、それに越したことはないのだけれど。
「足がむくんでました。疲れて腎臓が弱ってるのかもしれません。それに貧血かも」
どちらにしても一度きちんと検査しないと、と付け加えわたしは引き下がった。
「ご心配ありがとうございます。確かに最近疲れがとれなくて。
少しバイトを増やして楽しないとですね」
ショップは立ち仕事が原則なので、体力勝負だ。
年齢と共にその負担は大きくなる。
芽衣さんは正社員で、ゆくゆくはブランドの企画運営に携わる身だけれど、今はまだ現場を知るという意味で最前線に立っている。
この店を軌道に乗せるまでは頑張らないと、と彼女は気丈にも重い足を引きずって出社した。