ラララ吉祥寺
「で、木島さんは今日お休みなんですか?」
「あぁ、昨日文子さんに病院へ送って行って欲しいって頼まれたでしょ。
だから、アルバイトの田中くんに店開けといてって頼んだんだ。
だから、今日はゆっくり出社します」
自営店主の特権だからね、と木島さんは朝ご飯のフレンチトーストを大きな口で頬張った。
「すいません」
「別に文子さんが謝ることじゃないでしょ。僕もその方が良いと思ったし」
「でもやっぱり、ちょっと心配ですよね」
うん、と小さく頷いた彼は、少し間を置いて真面目な顔で話し出した。
「たぶんまた彼女は倒れると思いますよ。
彼女はもう立派な大人だし、彼女の意思を無視して無理矢理どうこうはできないでしょ。
でも、彼女がちゃんと自分に向き合う準備ができたら、僕達はそれを支えてあげるべきじゃないかな」
ここに一緒に住まう隣人としてね、と木島さんは付け加えた。
「はい」
わたしとしては異論を挟む余地はない。
じたばたするだけの自意識過剰なわたしより、彼はずっと頼れる男だと思った。