ラララ吉祥寺
休日の溢れるような喧騒の中、わたしが目指すのは駅向こうの井の頭公園。
正式名を都立井の頭恩賜公園という。
室町時代から在るという井の頭弁財天。
その社を囲むように広がる井の頭池。
春の桜も見事だが、わたしはその佇まいが一番好き。
朝夕、そしてこんな日曜の昼間でも、わたしは気が向けばこの公園へと足を運ぶ。
公園に足を踏み入れるなり、その緑の多さに圧倒される。
見上げる木々に囲まれて歩くと、直ぐに開けた井の頭池が目に入った。
池の中央七井橋から水面に映る雲の流れを眺めていると、周りの人混みも気にならないくらい不思議と穏やかな気持ちになれるのだ。
今日も今のところスマホに着信はない。
七井橋の中程で、ボートで溢れる池を目の前に立ち止まり、わたしは小さく一つ溜息をついた。
と、突然人混みから浮き立つ感覚に襲われた。
それは正に、世の中から一人取り残された孤独感。
ザワザワと押し寄せる黒い影。
わたしはそれを振り切るように、橋の向こう右手の弁財天を目指した。