ラララ吉祥寺
「騙されたと思って、ちょっと試してみませんか?」
そして彼は、その大きな身体を床に沈め、胡坐をかいてそこに座った。
「文子さんは、ここへ」
示された場所は、彼の胡坐座の中。
「えっ?」
驚いて立ちすくむわたしの手を強引に引いて、彼はわたしを引き寄せた。
「ほら、後ろを向いて、僕に背中を預けてみてください」
戸惑いながらも、彼の座の中に腰を沈め、背を彼に預けてみた。
「昔ね、僕が泣くと、祖父がこうして僕を座らせて抱きしめてくれたんです。
正面切って話せないことも、こうして背を向けると不思議と話せたりして。
何も話さなくても、なんだか守られてる気持ちがして、悲しい気分も落ち着きました」
「はい……」
「あ、だからって、文子さんに身の上話をしろ、って言ってる訳じゃありませんよ。
言葉にしなくても、癒される場所もあるってことです」
背に伝わる、彼の温もりが心地良い。
守られてるって感じがした。
それは木島さんだからこその包容力なのかもしれないけれど。