鬼姫の願い




その影は頻りに周囲に目を配らせている。


腰の刀に手を伸ばそうとする景綱を右手で制し暗闇を見つめる輝宗。


じっと目を凝らしてみれば、部屋の前に座っていたのは梵天丸のお付きの女中で。

見知ったその顔に二人はホッと小さく息を吐く。


それと同時に浮かんだ疑問。


何故彼女はあんな場所に一人、辺りを窺うようにして座り込んでいるのだろうか。


何かが起こっているのかもしれない。


その思いが再び頭を過れば、輝宗の足はゆっくりとその女へと近づいていった。




「…おい」




それほど大きくはないが、静かな廊下に響いた真っ直ぐ通った声は紛れもなく輝宗のものである。

そっと後ろから掛けれた声に、びくりと大きく揺れた彼女の体。




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