鬼姫の願い
振り向いたその瞳は二人を視界にいれた瞬間、驚くほど見開かれた。
そしてカタカタとその体が震えだす。
「と、殿…かた、くら…さ、ま…」
途切れ途切れに呟かれたそれに、先に顔をしかめたのは景綱で。
きつく痕が残るほど眉を寄せると、その瞳のままで彼女を強く睨み付けた。
その眼光の鋭さに女中の女は更に身を縮こまらせる。
「やめろ景綱」
「で、ですが…!」
彼女の行動が不審であることは輝宗とて百も承知。
しかし、仮に彼女が何かを企んでいたとしても、女一人にやられるつもりはない。
それよりも今は梵天丸である。