鬼姫の願い
(止めろ、俺…っ)
頭に浮かんだ最後の人物の顔に輝宗は痛々しく顔を歪める。
それは何より想像したくない人物であり、最も想像しやすい存在。
捨てきれない可能性に輝宗が苦虫を噛み潰す。
すると
「そ、その…中、に…奥方様、が…」
輝宗の前に座っていた女中が意を決したように口を開いた。
その言葉に輝宗の体が凍りつく。
後ろに控えていた景綱も驚きを隠せない様子で目を見開いた。
まさか、何かあったのだろうか。
頭を過った最悪の事態に、輝宗と景綱が顔を見合わせる。
そして部屋に入ろうと一歩を踏み出した。