鬼姫の願い
しかし
「お、お待ちください!」
それを止めようと慌てて立ち上がる女中。
「どけ!何かあっては…」
「ち、違うのです!あの、その…!」
女は何故か二人を部屋へ入れたがらない。
その態度に不審と苛立ちが募る。そして膨らむ疑心。
それならば強行突破するしかないと、輝宗が女中の体を振り払おうとしたとき。
それを遮るように一つの声が聞こえた。
「梵天丸…」
部屋の中から聞こえてきたか細い声に二人の足が止まる。
耳を傾ければそれは間違いなく二人のよく見知った義姫の声で。
輝宗と景綱はその場から動くことが出来なくなった。