鬼姫の願い
「…私の可愛い梵天…生きていて、よかった…」
そう梵天丸を呼ぶ声はとても優しく。
他の誰かかと疑うほどに儚い。
すっと音を立てぬよう障子を少しだけ開ければ、見えたのは眠る梵天丸とその頬を撫でる義姫の姿。
二人の気配に気付いていないのか、義姫はそのまま梵天丸へと言葉を続ける。
「…よくぞ、耐え抜きました。それでこそ輝宗様の子にございます」
そして、忌み嫌われていると思われていた右目にその手が触れた。
そっと、労るように。
「右目だけで、本当によかった…!」